高い所から落としても傷つかないかを試す実験。
コーヒーをこぼしても洗えば完璧に落ちるかどうかの実験。
どれも大切な実験である。
でも、僕は卒業研究でこれらの実験にアンチテーゼを示そうとしている。これは企業に入る前にやっておきたいとこの一つだった。
経年変化と聞いても、あまりピンと来ない人も多いと思う。
昔の製品は、劣化することを防ぐということは二の次の話であった。もちろん、機能を維持するための強度は必要だったが、キズ一つついた所で買い替えることはしなかったし、色褪せたからダサイということもなかった。
でも、素材や技術の発展により限りなくキズがつく可能性をゼロに近付けた製品が沢山開発された今は、キズというものは単なる劣化で、ネガティブな要素でしかないと断言されてしまうようになった。
僕はそこはおかしいと思う。
確かに、最初のキズというものは正直ダサイかも知れないが、それがどんどん増えていけばいくほど使い込んだ味わい深さが出てくるのではないかと思う。あくまでも噂だがipodの初期モデルの裏側が鏡面仕上げになっているのもそういった意図があるのではということを聞いたことがある。
でも、そういった経年変化というものの「良さ」は必ずあると思う。なぜなら、誰が使っていたかもわからぬヴィンテージ品やアンティーク家具の中古品が存在し、売られているという事実があるからである。
下の写真はうちの大学の今はなき塀。何となくではあるが、何かしらひび割れには魅力がある。
また、デニムジーンズや革のグローブ等は、使い込まれた風合いが独特の味を出すとして、一般に認知された良さを持っている。
上は紙袋の皺の良さにも惹かれた時の写真。実はこの後、深沢氏によるブランド「SIWA」があることを知る。
この皺加工された紙の製品が、皺のランダムな形状の気持ちよさ的なものを象徴している。
また、以下のような伝統的な技術もある。
これは、グッドデザインに参加されていた三信加工さんに聞いたお話だが、昔の日本人は欠けた茶碗をそのまま完璧に復元しようとするのではなく、欠けを活かした「金継」という手法を使って、新しい茶碗に生まれ変わらせていた。
つまり、無理に治そうとして中途半端な状態になるよりも、「欠け」を受け入れて、そこに金を流し込み、高級感の漂う新しい茶碗に仕立てたのである。
この、経年変化を上手く汲み取り、製品の良さとして受け入れていく思想が素晴らしいと思った。
また、話しは少しそれるが、堆朱という技術もある。これは僕の大学の石塚先生に聞いたお話だが、漆を塗る下地を波打たせて、その上に色の違う漆を何層も積層し、表面を平らになるまで磨くことでランダムで美しい模様が浮かび上がるというものだ。下がその技術で作られたお盆。
卒業研究のアイディアを練っていたときに何度もこれを使うことを考えていた。摩擦によって摩耗する経年変化で、この模様が削れてどんどん変わっていったら面白いのではないかと思ったからだ。
しかし、それは経年変化を利用した良さではあるが、経年変化の良さの本質ではなかった。
そこから僕は「味」というキーワードを基に研究を進めていった。
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